「その女アレックス」(ピエール・ルメートル/著 橘明美/訳)の感想

★★★★
伯爵レグホン大佐 2015/02/21(Sat) 20:32

あらすじ

「その女アレックス」とはフランスで発表された犯罪小説で何かの大賞を受けた作品である。アレックスという三十路でカツラ着用の女性が路上で誘拐される。警察は捜査を始めるが全く見つからない。誘拐事件の真相が少しずつ明らかになるにつれ、捜査の焦点は女性を救うことから、女性が何者なのかへと変わっていく。果たして誘拐されたアレックスとは何者なのか……。

感想

本書は犯罪小説らしい。私は犯罪小説というジャンルがあることを初めて知った。犯罪小説とはミステリー小説に警察が関わる、あるいはミステリー小説で警察主体のストーリーのものを指すのだろうと本書を読んで感じた。犯罪ものはテレビでもよくドラマで流していると思う。有名な作品は「相棒」だろうか。「古畑任三郎」なども犯罪小説(ドラマ)の仲間に入るのだと思う。他にもサスペンスドラマ、火曜サスペンス劇場みたいなものが犯罪小説、犯罪ドラマ、つまりは犯罪ジャンルの作品なのだと思う。

「京都おかみ殺人事件簿」とか「博多~東京間新幹線殺人事件」とか「密室の○○ミステリー」とか「窓部太郎の○○○事件」みたいなドラマがよくテレビで放送されている。このような作品が好きな人もいるのだろう。私はあまり観たことはないが、大体2時間くらいの、尺が長い作品が多い。尺の関係上、私はそれらを観る気が起きない。

ところで本書は、描写がとても気持ち悪い。犯罪小説は描写が気持ち悪いものが多いのだろうか。例えば小さな箱に無理やり閉じ込められたアレックスが、自分のふくらはぎに木片を突き刺して血を流す描写や、ネズミが今にもかじりついてくる描写、目と喉(のど)にドライバーを力いっぱい突き刺し、血がどぼどぼ流れる描写などである。

本書は「アレックス」と「警察のカミーユ」の2人の視点で交互にストーリーが進む。警察側のカミーユは誘拐されたアレックスを探して捜査を続ける。2つの視点はリンクしそうで中々リンクせず、もどかしい。ただカミーユ視点のストーリーよりも、アレックス視点の方が興味深く、特に序盤はカミーユの視点は読み飛ばしたくなる。私はアレックス視点の続きが気になり、カミーユのほうはどうでも良いと思いながら読んでいた。ところが終盤ではカミーユ視点がストーリーの主体となっていく。熟読しないとカミーユ側の登場人物の区別が付かなくなってくるので、カミーユ視点のほうもしっかり読んだほうが良い。

カミーユ視点ではカミーユの他にもアルマン、ルイ、ヴィダール等が登場する。他の人物の名前は覚えていない。ところがこれを覚えていないと終盤のストーリーが分からなくなる。人物が出てくるたびにこいつは誰だったかと悩む。

警察側の登場人物に個性がないのが問題である。カミーユは身長が140cmほどしかないという特徴がある。アレックスは読み進めると分かるが、とても個性的な人物なので興味深い。アルマンは倹約家である。ルイ、ヴィダールほか多数は特に特徴がなく覚えづらい。というよりキャラクターに魅力がない。魅力といえばカミーユにもない。アレックス以外は魅力がない。というよりも、アレックスの印象が強烈で、他の人物の魅力が薄れているのかもしれない。

なお、本書のラストはいやにあっさりと終わる。実にあっけない。他の人のレビューを見ると終盤は大逆転などと書いてある。確かに大逆転なのかも知れないが、あっさりとし過ぎている。終盤はアレックスの過去を紐解く(ひもとく)話でもあるが、あっさり系だと思う。本書は3部構成だが、ラーメンでいうと1部がこってり、2部がどろどろ、3部があっさりというところではないかと思った。

終わり

未分類の本の感想文