「ヴェニスの商人」(シェイクスピア)の感想
伯爵レグホン大佐 2014/01/13(Mon) 00:04
あらすじ
「まったく、どういうわけだか、俺は憂鬱なんだ。」 ヴェニスの商人であるアントーニオはうつ病にかかる。一方、友人のバッサーニオとロレンゾーは恋愛に夢中で恋人を追い詰める。それぞれの思惑をもとに―「アントーニオ」、「バッサーニオ」、「ロレンゾー」、三人の思いが交錯するとき、物語は唸りをあげて動き出す。疾走感溢れる筆致で綴られた、分類不能の「商人」小説!
感想
主人公のアントーニオはうつ病である。 アントーニオの友人サレーリオは「陽気じゃないから憂鬱なんだ」と語る。 また、別の友人のサリーリオは商売の先行きが不透明だから鬱なんだと言う。 アントーニオ自身は彼ら2人の客観的な意見に対し、どちらも違うと言う。 これはそんなアントーニオのお話。
せっかくなので登場人物を紹介しようと思う。 なにしろ名前が分かりづらいので整理したいと思う。
登場人物
- アントーニオ……うつ病の商人
- バッサーニオ……アントーニオの心の友。 お金がないのに贅沢をするので万年貧乏だが、お金はアントーニオが借してくれる。
- ロレンゾー……アントーニオの立派なお友達。それ以上でもそれ以下でもない。
- グラシーアーノ……アントーニオの立派なお友達。とても饒舌で彼の台詞だけで1ページ半が埋まることもある。
- サレーリオ……アントーニオのお友達A
- サリーリオ……アントーニオのお友達B
- ポーシャ……ブルータスの妻とは関係ない。嫌な感じの女性。絶世の美女らしい。
- ジェシカ……親不幸の塊のような存在の女。
- シャイロック……ユダヤ教徒のため差別されているが、お金持ちの商人。ジェシカの親。
さて感想に戻るが、アントーニオがシャイロックにお金を借りることから話は進んでいく。 アントーニオがシャイロックにお金を借りたのは、アントーニオの心の友であるバッサーニオにお金を用立てるためである。 バッサーニオは、お金はアントーニオに借りれば良いと思っている節がある。そんな気がする。 また、アントーニオはシャイロックに利子なしでお金を貸せと言う。 アントーニオはシャイロックに対し、つばを吐きかけたり、足蹴にしたり……などを今までしてきており、本人の目の前で今後もそうしますと宣言する。 アントーニオはユダヤ教徒に対する差別が酷い。 しかし、アントーニオ以外の登場人物もユダヤ教徒を差別しているのでこれはアントーニオ個人の問題ではない。 時代的なものだと思う。それでもそれを差し置いてもアントーニオは嫌な奴だと私は思った。
ロレンゾー、サリーリオ、サレーニオは、とりわけ語ることもない人物なので省略するとして、次のポーシャも嫌な奴である。作中では絶世の美女で誠実、公明正大な人物らしい。 しかし、台詞を読むと口汚く、どうにも嫌な印象を受ける。
ジェシカは父親であるシャイロックの財産を盗んでロレンゾーと駆け落ちした後、父親を破滅に導く人物である。だが、その父親はユダヤ教徒なので、そういうひどいことをされてもストーリー上なんの不思議もない。 しかしこれもその時代の感覚であって、私からすると親不孝者でしかない。
さて、その父親のシャイロックはどういう人物かというと、これも中々よろしくない。 本作は「シャイロックの悲劇」と言われているとウィキペディアに書いてあった。 しかし、シャイロックも結構な悪人なので悲劇とは言えないのではないだろうか。 ただ、シャイロックの最後の台詞「どうかもう引きとらせてください、なんだか気分が悪くなってきたので」というのを読むと、なんとなくかわいそうな気分になってこないこともない。
グラシーアーノ―は本作で最も覚えやすい人物である。 名前が~ニオでないし、冒頭で台詞が多いためだと思う。 ただ、物語が進むに連れて彼の台詞は少なくなってくる。 とりあえず騒いでいる男である。 本作の締めくくりも彼が務めている。 本作の中では中々好感が持てる人物である。 この作品で他に好感が持てるのはシャイロックの友人のテューバルくらいしかいない。
本作はシェイクスピアの作品の中でも有名な方だし、読みやすいので皆も読むと良いと思う。 ただ、本作には好感の持てる人物が少ないということを心して読んでもらいたい。
おわり。
印象に残った台詞
- バッサーニオ「この私のために3000ダカットも」
ポーシャ「たったそれだけ? なら6000ダカット払って帳消しになさるといいわ」 - グラシーアーノ「ダニエル様の再来だ、ダニエル様だぞ、ユダヤ人!」
- シャイロック「ありがとう、テューバル、いい知らせだ、いい知らせだ!ハッ、ハッ、ハッ。」