ジャガイモの種芋は切ってはいけない

私が毎年購入している春植え用のジャガイモの種芋の様子が2020年代の初め頃以降、少し変わったと思うため、そのことをここに書いておきたいと思います。あくまでも私の周囲のお店で販売されていた種芋の話であり、日本全国どんな商品でも必ずそうであるという話ではありません。

個々の種芋の重量の変化

種芋1個1個のサイズが小さくなったと思います。昔は成人男性のこぶしに近いような大きさの種芋も1袋の中に1、2個入っており、種芋を3片に切って使うこともありましたが、近年は個々の種芋のサイズが小さくなったと思います。

2024年春用の袋詰め時1kgのメークインの種芋の例
通し番号重量÷2
1117g58.5g
291g45.5g
390g45.0g
489g44.5g
583g41.5g
680g40.0g
778g39.0g
878g39.0g
972g36.0g
1066g33.0g
1166g33.0g
1260g30.0g
合計974g487g

タキイのジャガイモ栽培マニュアルによると「種イモの重量が60g以上になるとイモの収穫量に差異はなく、1片の大きさは40~60gで十分」とされており、大きい種芋は切って使うのが一般的だと思いますが、個々の種芋のサイズが小さくなっているため、「1個丸ごと使うにしては大きいけれど、切って使うには小さすぎる」サイズの種芋が増えてきていると思います。80gの種芋をきっちり40gずつに切り分けられることはまれで、100gの種芋でも適当に切れば60g台と30g台の種芋に分かれたりするため、私は種芋を切ることに消極的です。長卵形の種芋の腹を横に切って「頂芽部があるほう」と「頂芽部がないほう」の2片に切り分けるというならまだしも、わざわざ切りにくい縦方向に種芋を切って、しかも80gの種芋をきっちり40gずつに切り分けられることなど、私にはほとんどありません。

他の商品の話になり、また、もしかすると特に何かが変わったわけではなく以前からそうだった可能性もありますが、種芋が小さくなりすぎて商品の裏面に書いてある説明書の説明にそぐわないケースも散見されます。たとえば種芋2個入りの商品で「小さい種イモの場合(40~60g)は切らずにそのまま植え付け」「大きな種イモ(100g以上)の場合のみ半分に切る」などと書かれていても、実際には22gと27gの種芋が入っていたケースなどがそうです。

1袋の種芋の総重量の変化

袋に書いてある種芋の重量は袋詰め時の重さです。購入時には重量が減っているケースが多いです。近年は購入時に重量が1000gあることはまれで、低いと900g前後(要は800g台)、高くても2024年春は974gでした。

1kgの種芋で作れる株数の変化

以前は袋詰め時1kgの種芋を買えば20株程度の種芋を作れていましたが、近年は1袋の種芋の総重量の低下、個々の種芋のサイズの低下により、たとえば上表のメークインのケースだと、もし教科書通りにジャガイモを栽培するなら私が種芋を切って使うのは通し番号1番の種芋のみになるため、作れる種芋の数は13個、つまり13株しかジャガイモを育てられなくなりました。

種芋の品種の変化

2010年代後半ごろは春用の種芋は定番3品種(男爵、メークイン、キタアカリ)しかお店にありませんでしたが、年を重ねるにつれ、他の珍しい品種の種芋も販売されるようになってきました。私の近所のお店では定番3品種のほうが先に出回ります(1月~)。珍しい品種は1か月程度遅れて後から出てきます。珍しい品種は定番3品種よりも値段が高めです。私の近所のお店にあったのは「十勝こがね」「きたかむい」「ピルカ」「とうや」などです。

晩生のジャガイモは春植えに向かない

秋ジャガの種芋としてよく販売されているデジマ(中晩生)などを春植えすると、株が枯れるのが遅くて次の栽培に進みにくくなります。早く次の栽培に移れるという意味では、春植えの種芋は極早生や早生のジャガイモ(インカのめざめ、男爵、キタアカリ等)が適していると思いますが、インカのめざめは収穫できるジャガイモが小さいため個人的にはおすすめしません。ちなみに早生と中生の収穫日の差は今のところ経験上0~2週間くらいです。私は週末しか畑に行かないため、一度でも収穫を逃すと必ず翌週以降の収穫になります。2週間たつとメークインはもう完全に枯れ切っていて、地上から茎や葉が完全に消滅しているような状態です。近年は作る株の量が減ってきており、ジャガイモを品種ごとに分けて収穫することが面倒になってきたため、男爵とメークインを同時に収穫することが多いです。

極早生インカのめざめ(小さい。実が黄色い)
早生男爵、キタアカリ、十勝こがね、きたかむい、とうや
中生メークイン、ピルカ
中晩生デジマ

外観を見て品種が分かることは大事

これはサツマイモを栽培していて思ったことですが、サツマイモはどれも大体外観が似ており、どれがどの品種のサツマイモなのかを素人の私には判断できません。そんなサツマイモと比べるとジャガイモは外観から品種を判断しやすいものが多いと思います。もし外観が似たような品種のジャガイモを同時に育てると、自分はジャガイモを品種ごとに分けて収穫しているのに、家族に勝手にジャガイモを混ぜられたりしたときに、どれがどの品種のジャガイモなのかが分からなくなります。

種芋の値段の変化

種芋は毎年値段が少しずつ上がってきています。私の近所のお店では2010年代後半ごろは男爵1kgで税込300円弱だったと思いますが、2024年春には同商品が税込400円弱になり、キタアカリは400円を超えました。値段のつけ方はお店によって差があり、定番3品種(男爵、メークイン、キタアカリ)を同じ値段で売っているお店や、キタアカリ>メークイン>男爵と値段に差をつけて売っているお店があります。種芋は1kgだけでなく2kgや3kg単位での販売もあり、1kgあたりの値段は2kgや3kgの種芋のほうが安いです。たとえば1kgの種芋を3袋買うよりも3kgの種芋を1袋買うほうが値段が安いです。

秋用のジャガイモの種芋の値段

秋用のジャガイモの種芋の定番品種はデジマです。のちにここにニシユタカが加わりました。秋の種芋は元から値段が高めです。2010年代後半ごろは1kgで700円くらいでしたが、これも値段が上がってきており、2023年には800円くらいになっています。秋は種芋の値段が高いためジャガイモを作ることに向いていません。しかも、秋のジャガイモ栽培は、種芋を切ると種芋が腐りやすいため、種芋を切って増やすことができません。ジャガイモは春から育てたほうが良いと思います。

アイマサリは秋でも切れる?(たぶん切れない)

2024年秋用のアイマサリ(500g)は(どうして2024年秋用かというと私が2024年夏に初めてアイマサリの種芋を購入したためで2023年以前はどうだったかは分かりませんが)、パッケージ裏面に書いてある「※種芋は暑さと蒸れに弱いので切らずに植えてください」という文字の上に白いテープが貼られていました(文字が完全に見えなくなるほどの濃いテープではなく、うっすらと文字が読める程度の白いテープです)。ただし、この商品の説明書を見ると種芋を切って植えろとも書かれておらず、「手軽な育て方」として例示されている絵のうち一段目を見ても種芋は切っていないように見えますが、二段目の絵を見ると「いや、この絵は切った面を下にして描いた絵なんだよ」と言われると切っているようにも見えるような絵になっており、もしかすると品種によっては切っても腐らない種芋があるのかと思いましたが、個人的には秋の種芋は切ると100%腐ると思っているため、怖くて切れませんでした。

デジマは春でも高い

2023年に春植え用の種芋としてデジマを売っているお店を見つけました。2kgで税込1400円くらいでした。秋の種芋が高いというよりも、デジマの種芋が高いのかもしれません。とはいえ、秋の種芋は、ニシユタカもデジマ並みに高いです。ジャガイモは春から育てたほうが良いと思います。